未知日記霊話集千五百八十五回  帰途案内記 NO4 徒事に争闘をなして行くべき道を進まずば、退歩の速度は却て多くなることも亦考慮せざるべからず。世人は進むと思ひて却て退く結果となることの多きを悟らざるべからず セイキョウ貴尊講義

未知日記 第十巻 帰途案内記       
巻の一
大序の巻 
NO 4
セイキョウ貴尊 講述

            
 前巻(因果論)に於てミキョウが語りし尺度計を用いて是を通算し見よ。世人は一日空費なし居る距離は、あまりに大きに一驚を喫するならん。空しきことに怒り悲しみて、肉体を浪費せしめ居る事の如何に多きかを考へれば、是等のあやまちを早くすてて悟りの道を択ばずば、一日四百三十二万里のへだたりはまぬがるることあたはざるべし。怖ろしき事ならずや。今是を電波の速度にて考へ見よ。電波は秒速地球を七回半めぐると云ふにてはあらざるか。仮に地球の一周を一万里と仮定して計算するならば七万五千里は一秒にして消滅するにてはあらざるか。肉体を有するが故に時間は大切なり。距離も大切なることは云ふ迄もなし。距離は位置を有するが故にこそ現はるる現象にして、位置を有せざれば距離の測定はなしがたからん。嬰児は次第次第に時間によって成人す。是位置と距離と時間を有するが故なり。
 我、はじめ慈音に接したる時、彼が我に対して亀とアキレスの競争問題を我に質問なしたるに対して説明を彼に与へたれど、彼は是を会得するあたはず、今尚通算なし居るを見て余りに智慧なきに驚く他なきなり。嬰児が一日のびる程度は遅々として亀の其の如し。されど光陰の速度は四百三十二万里をかけ居るにてはあらざるか。是によって考へをめぐらさば其によってアキレス、亀の速度は同一なることを認識するにてはあらざるか。即ち亀には亀の速度あり。アキレスにはアキレスの速度あれど、帰するところは両者同一の結果となり居る事に思ひを致さば、何等不審するところはなかるべし。もとより此質問は発着点を定めずしてと云ふ問題なりしことを附言しをく。発着点定まりあらば誰しも速度の差を計算することは、易きことは異論の余地なからん。
 先に語りし嬰児も老者も同一の速度によって位置を変へつつありと説きたるは是なり。斯る説きかたにては世人には解釈することあたはざるか。もし解釈なし難きと云ふならば、特に質問の矢を我に向けよ。言葉を平易にして明らかに会得せしめんとして、却て迷ひを深くせしむる如きは我等の説きかたの至らざる故なり。故に解し難ければ聞くべし。
 世人は訳もなきことに心を用いて其居に争ひをなし居る間も、位置は速度によって変更せられ居るが故に、光陰は容赦なく失せ行き失せつつあるなり。是を尺度計にて計算なさばわづかの時間の争ひも、其隔は多くなりつつあるによって距離は益々加はる。是進むにあらずして退き居ることに心づくならば、徒事に争闘をなして行くべき道を進まずば、退歩の速度は却て多くなることも亦考慮せざるべからず。世人は進むと思ひて却て退く結果となることの多きを悟らざるべからず。
 所謂亀は遅々として歩みを運び、アキレスは進むと見えて却て退歩をなすに等し。此理を世人はさとることを得るや。聊かむづかしき説明にて解し難からんとは思へど、後に至って又もこの説は論ずることもあらん。今は唯世人の脳中に考へをくべし。解しがたければ其にてもよし。解することを得ば結構なり。何れにもあれ話は次にうつるべし。

×

非ログインユーザーとして返信する