父祖の足跡 18 孝行したいときに親はなく、さりとて墓に布団はかけられぬ

 この二か月の間、隣町の図書館にある「ひろさちや先生の監修による仏教コミックス」全七十巻を読破した。内容は平安.奈良.鎌倉仏教の祖師達(法然、親鸞、栄西、道元、最澄、空海)などの伝記、経典の説明また京都奈良の寺に祀られている仏像の由縁などが解説されているものだ。僕は仏教の教えに疎く、大変有益であった。マンガ本なのでとても読みやすく、妻にも勧めた。しかし彼女はその時なにかに夢中になっていてその時は読まなかった。二、三日前からその中の一冊(父母恩重経)を手に取り読み始めたらとても面白く全巻読んでみたいと言う。そこで今は大野市へ足繁く通う次第となった。最近僕もそうだが妻も同様眼が疎くなっていて、細かい文字がぎっしりと詰まった本などは自然と敬遠してしまう。
僕達の老いた姿を見て息子夫婦は僕達と僕の娘そして孫二人を大野市の料亭に連れて行き馳走をしてくれた。そして八月のお盆の墓掃除には息子と孫等で隅々まで掃除もしてくれた。翌日の昼過ぎお墓参りに行くと豪華なバラが墓前に献じてあった。聞けば今高知に里帰りしている嫁の敦子さんが一人で先に墓参りしてくれていたようだ。息子も本当にいい嫁をもらったもんだ。映画「東京物語」に出演されていた、放蕩の四男坊の役であった大坂志郎さんが亡き母の眠る墓前に額ずき「孝行したいときに親はなく、さりとて墓に布団は掛けられぬ」の有名な一節を囁くシ-ンが蘇った。みんなそうだ。僕もそうだった。誰しも自分の母を亡くしてようやく失ったものの大きさに気が付くもんだ・・・・・・

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