宇宙からの訪問者 NO16-その2  小説 僕達の世界の貨幣、結婚、愛情のこと

 僕達の世界には貨幣というものが流通されていない為に、それを無理やり溜め込む金持ちもいないし、又それに欠乏して苦しむ貧者もいない。だから当然貧富の差もなく、それを妬む犯罪者もいない。よってそれを召し取る警察組織もないし、それらを裁く裁判所もない。だから当然刑務所なんてところもないよ。だから君達の世界で重宝がられている金、銀、ダイヤモンド、その他の財宝と云われるものに誰も執着を示さない。そんなものは石か瓦と同用のガラクタにすぎないことを知っているからだ。君達の思う財宝などは、この地球上では通用するかもしれないけれど、この広き宇宙では誰も一顧だにしない。僕も行ったことがある星では、その原野にどでかいダイヤモンドの原石がそこら中にゴロゴロ転がっていたよ。やがて時間と共に君達の世界も貨幣制度がなくなる時が来るだろう。人々はそれぞれ何に関心を持ってるかと云うと、主に芸術関係と音楽の作曲が多いね。君にもその作品群を一度見せて聞かせてあげたいもんだね。それはそれは素晴らしい芸術作品だよ。作る人はそれこそ一心不乱に、精魂込めて作り上げている。この地球では女の人は身を飾り、次から次へと新しい洋服を買い求め、顔を整え、化粧品を塗りたくっている。僕の星では化粧なんかする必要の無いほどみんな奇麗だ。成人したら、一つの服を与えられ、それを終生着ることになる。政治家は政治家の服、学者は学者の服、宗教家は宗教家の服という具合にね。その服は決して垢附き汚れることもなければ、汚損することもない。例えば水に浮かべれば舟の代用にもなり、空を飛翔するマントにもなる。子供達はそのマントを羽織り、大空に舞い上がり、空中に絵を描いたり、花々を飾る遊びをしているよ。丁度、日本の仏画に描かれている飛翔天女みたいなものだ。
 それと結婚制度の事についても話してみよう。でも君はまだ若くて独身だもんな。結婚問題なんてもっと将来の問題だよな。まあ、後学の為に聞いておいても損はしないだろう。
この地球では不倫とか離婚のことなどが姦しく論じられているけど、まあ、この星の現状から推して、それもやむを得ないのかもしれないね。僕達の世界の人類は誰一人として、享楽的、性欲的な交わりはしない。そうなんだ、子供を得るため以外の交わりは決してしないのだ。そして子供も儲ける間を苦しみと考え、その役目を果たした後の夫婦は全く楽しみを味わって一生を過ごすことになる。そして夫婦の間に三子以上生まれたら第四子目からは子供の授かっていない夫婦が育てる約束になっている。だから今日本で深刻なっている少子化問題なども存在しない。当然人口は少しずつ増えてゆく。それが星が栄えてゆく一つのバロメーターともなり得るのだ。

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