宇宙からの訪問者 NO15  小説 イエスのこと

 

  僕もこの地球の事を昔から関心があって、色々と調べてきたよ。ひょっとして君達地球人よりも詳しく知っているかもしれない。君達が昔から尊敬している釈迦とかイエスのことも調べてみた。イエスが少しの魚とパンをちぎり、それを何百人者のお腹を満たすまでに増やした話が二つの福音書に書かれているよね。君は読んだことがあるかい。又、釈迦が一夜にして乞食に金銀財宝、それも蔵を満たすほどの量を授けた話も仏典に載っている。これらの奇跡の話をクリスチャン、或は仏教者の人達ですら、自分の持つ科学的思考能力にそぐわないからと、とかく否定することが多いようだ。でもこれらは全て真実なんだ。あと五百年も君達の科学が進歩すれば、釈迦やイエスが行った奇跡の数々を、やがて科学者自身の手で立証するようになるはずだ。但し、その原理が理解できたとしても、実用化するにはもう少し時間が必要だ。それ程彼等は、君達地球人種の中では抜きんでた人達だつたのだ。
 僕の星では空中から食物を作ることを日常におこなっている。君も学校で習った炭水化物やタンパク質などは炭素、水素、酸素の化合物だ。君達の化学式を使えば、炭水化物は、C6H12O6になる。そして炭素も水素も酸素も、これらは空気中に無尽蔵にある。それらを精妙に化学的に組み合わせる機械を作れば、食料自給の問題は永久に解決できるのじゃないか。
イエスは遠い昔、その原理を宇宙人から学び、空中からパンや魚を取り出したんだ。君達人類がこれまで取り組んできた衣食住の三大難問が一気呵成に解決できれば、今までの人生観なるものが如何に低次なもので、あれは人生観とは云わず、単なる畜生観を鼓吹していたに過ぎなかったことがわかるだろう。まさしく、人はパンのみに生きるにあらずだね。太古の昔から地球人は食わんが為に生きる、貧しい人生観を鼓吹してきた。今からは生きんが為に食う生活になって行くんだろうね。現にこの地球界でも一株から一万個以上のトマトの実を作ったり、プラスチックの廃棄物から灯油に還元できる装置もできている。これからどんどんと画期的な技術も生まれてゆくだろう。今はこの地球の第二文明期の幕開けとも云うべき、その黎明期といっていい段階にある。

 僕達の星の名前はアリータ星と呼ばれている。アリータというのは僕の星の女神を呼ぶ愛称だ。環境もこの地球とよく似ている。人口は百億を超えている。海も山も川も森もある。そして海嘯だってある。地震も台風もある。唯一つ違っているところは、二つの太陽が僕等の惑星を廻っていることだ。その為、僕等の世界は夜がない。

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