宇宙からの訪問者 NO14  小説 僕達は去年に収穫された米、君達は今年収穫される米

 僕達の円盤は一光年の距離(九兆五千億キロメートル)を飛ぶのにおよそ、一か月位の日数がかかる。でも僕達よりも科学が進んでいる星の人達はたつた七、八日位で移動することも出来る。そんな星もこの宇宙にはたくさんあるみたいだ。だから、その星の人達からみたら、僕達は全くの未開の人類みたいなものなんだ。僕達もあと二、三千年程も経過したら、その星と同水準の科学力を手に入れるところ迄追いつくことが出来ると思っている。更により高度に進んだ文明を持つ人類は、僕達が使っている星間飛行物体など使わず、星と星の間を瞬時に肉体もろとも移動できる能力を持っている。円盤を使わず肉体そのものを移動するのだから、たまげたものだ。もし君達がその人類を見たら、まさしく神そのものに見えるかもしれないね。しかし、是等の人類も僕達同様、人の進化したものなのだ。他の動物たちは進化の速度は遅々として進まない。その点、人類は限りなく進化することが出来る。ここに人に生まれた尊さ、有難さはあるといっていい。雄哉君、これを君達が食べている米になぞらえれば、僕達は去年(こぞ)に収穫された米、君達は今年収穫された新米の違いでしかない。この宇宙の中で僕も君もお互い進化の道程にある比較的青くて、若い人類達なんだ。
 現在、地球の学者達が提唱している、宇宙の創生はビッグバンによって百五十億年前に始まったということを定説にしているね。でもそれはあくまでもこの銀河系のような小宇宙のことであって、全宇宙のことではない。この全宇宙の起原を遡れば、億年とか、兆年とか、或いは京年とか、などのそんなちっぽけな単位では測れないんだ。もっともっと稀有壮大な単位を必要とする。この星に始めがあり、終わりがあるように、この小宇宙にも始めがあり、終焉の時も来る。しかし全宇宙は始めもなく、終わりもない。いわば無始終(むしじゅう)に創られている。始めなく、終わりなくの意味だよ。だから無始終なのだ。ほら、雄哉君も授業で学んだように分子が結合して、いろんな原子が組織されたことは知ってるね。でも更に原子よりも更に更に微細な物質が物を作る元素なんだよ。今学者が唱えている素粒子やクオークでもない。もつともつと微細なものだ。それを僕達は無始終霊子と呼んでいる。これはいかなる高倍率の顕微鏡をもってしても見ることはできない。この無始終霊子が万物を組成しているから、すべては不滅で、永遠に滅するものはないんだよ。

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