宇宙からの訪問者 NO11  小説 宇宙人の名前はコーシン.リョウジャ

 僕の名前はコーシン.リョウジャーと云うんだ。年齢はこの地球時間で云うと六百歳はとっくに越えている。でも地球人の年齢感覚で云えば、まだ、二十歳を少し過ぎた位の若造なんだ。驚いたかい。僕の星では二千歳を超えた人は沢山いるよ。中には三千歳を超えた人も幾人かいる。でもその人達は君達地球人の様に白髪になったり、歯が抜け落ちて、しわしわの老人になったりはしない。そして背中も真っ直ぐで、いたって肉体は健康でいつまでも若さを保っていられる。だから外見だけでは年齢は決して判別出来ないんだ。もし区別するとしたら、それはその人の智慧の発達度だろうな。壮者に比して老者の智慧の発達には、それは凄まじいものがある。実際、君達地球人も自分の脳力の僅か十%を駆使しているに過ぎない。残された九十%は使われることなく、無為に放置されているんだからね。ほんに勿体ないことだ。この地球では老人になるとアルツハイマー病やボケ現象が出てきて、老人は段々と幼児性を帯びてくるようだが、僕等の星の老人は老いて益々盛んに学究的になって行くんだ。僕の星の新発明、新発見の殆どはこの老人達の功績によるものだ。その意味で、僕達の星では老人を真に敬愛し、尊敬する習慣がある。何千年前は僕の星の人も君達の星の状態とそっくり同じだった。でも軈て科学が発展するに連れて君達の肉体の構造も一変して僕達のような肉体構造になって行くことを僕が保証してあげよう。何故、僕達が長生き出来るかと云うと、それはまず身体の構造が根本的に違うからなんだ。
僕達は食事をしても食べ物を完全に消化吸収してしまうから、排出物は出ない。それら不要のものは、身体の全表面から気体となって出て行ってしまう。君達の人類の様な長い腸は持ち合わせていない。そのため病気などもしない。でも残念ながら長命は得られたとしても死からは免れることはできない。だから僕の星の人達は病気で死ぬことはないんだ。死ぬ場合はすべて天寿を全うした時だけに限られている。まして世を儚んで自殺するものなど皆無だ。僕達の星の医者は予防医学に重点を置き、外科手術などによる治療などは一切しない。勿論、酒やタバコなどの嗜好品を好むものは誰一人としていないがね。
何故、神は僕達人間に生死を与えたか。仮に僕達が不死の肉体を持っていたら、この肉体は元級のままに留め置かれ、僅かの変化発展しか望むべくもない。しかし限りなく魂を成長させ、同時に肉体をも変化を与えるために、神は人類に死を与えたと聞いている。
この世で愛別離苦の苦しみを味わったものに者に対し、こういった言葉を投げかけてもおそらく首肯されるはずもないけれど、長期の視点に立てば、死はまさに慶事でもあると云えそうだ。残念ながら「人生一代限り」と思う短いスパンから考えれば、字義の通り、死は忌み嫌われるものになってしまうのだろうな。

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