宇宙からの訪問者 NO10  小説 宇宙からのメッーセジー

宇宙からの来訪者


 事件が起きたのはもうじき夏休みも終わろうとする夜だった。昼間の熱気が未だ冷めやらぬ暑苦しい時間だった。その日、僕は不思議な体験をした。時刻は夜の七時を過ぎていた。僕は涼みがてら物干しで仰向けになり、星空をぼんやりと眺めていた。電灯の明かりさえなく、周りは漆黒の闇だ。偶々通る車のヘッドライトが国道筋を一瞬明るくする。その日は空気が澄み切っていて、雲ひとつなく、空には満天の星々が輝いていた。その時、近くの山の端に虹色に光る空飛ぶ円盤がゆっくりと不時着するのを僕は見た。もう胸が張り裂けんばかりにドキドキした。でも、怖いもの見たさも手伝って、家人には告けず黙ってそれを一人で見に行った。円盤は道路からかなり外れた沼地近くの原野に静かな金属音をたてて静止していた。
 よく見ると円盤は地面に直接着地しているのではなく、五十センチ程浮遊した状態にある。その物体は空中にあった時のように虹色には光っておらず、薄くぼんやりしたオレンヂ色に替わっていた。まるで大きな人魂だ。円盤の大きさは直径およそ三十メートルもあったろうか。高さはおそらく七、八メートル位はあるようだ。僕は大きな木に隠れ、身を屈めてそれをじっと見ていた。軈て入口が静かにすっと開き、中から一人の人間が階段をゆっくりと降りてきた。僕は恐ろしさに思わず逃げようと思った。その時、僕の頭の中に声が響いた。
「君、名前は雄哉君だったね。こわがらなくてもいい。こちらへおいで、僕と少し話をしょう」僕の足は金縛りにあったように硬直し、暫くは動けなかった。でも二十秒位したら、ゆっくりと恐る恐るその宇宙人に近づいて行った。その人の姿形は僕達地球人とよく似た体形をしていた。しかし、身体全体が少し光を発して輝いているようだ。「あっ、あれがオーラなんだ。オーラで光輝いているんだ」と僕は思った。髪の色は亜麻色をして、目鼻立ちはくっきりとしていて、とても端正な面輪をした魅力的な人だった。今までTVや映画で見たような醜怪な顔ではなかった。その人は云う。
「雄哉君、驚かせてすまなかったね。今、僕等の飛行船がちょつと推進エンジンに不具合が生じて修理をしているところなんだ。明日の朝までには多分飛び立って行けると思う」
その言葉は肉声ではなく、僕の頭の中で囁かれるように伝ってくる。これがテレパシーというやつなんだろうか・・・・・・
その宇宙人は続けて言う。
「僕は君の心に直接語りかけているんだ。だから、君の国の言葉となって君に伝わってゆく。君は今、伝わってくる言葉をテレパシーと考えたようだけど、少し違う。テレパシーは言葉の断片しか伝えられない。いわば君の脳中にインスピレーションとしか浮かんでこない。僕の語りかけは思念の伝道と考えた方がいい。それは言葉でない言葉、いわば僕の思念を有言詞化する方法だ。雄哉君、決して恐れなくていい。この方法は僕等の仲間だけでなく、異星の人にも語りかけるコミュニケーションの一つだ。僕は君と友達になりたいと思っている。安心していい。君に危害を与えるものではないからだ。僕はこの地球からおよそ五光年離れた惑星からやってきた。母船は木星の基地に繋留し、この小型飛行機に乗り換えて、この星にやって来た所だ。乗組員は全員で五名、木星からこの地球までの所要時間は七時間余り、僕がこの地球に来たのはこれで三度目だ」・・・・・・

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