覚者慈音917    未知日記 第六巻 光明論    上巻 光明論 巻の五   人体に輝く光明

覚者慈音917
未知日記 第六巻 光明論       
上巻 光明論 巻の五 
明鏡篇  その五
第五の明鏡   その3
人体に輝く光明
偶像信仰について



                教主寛大 講述
                2019.401                        192番


 
 此偶像信仰より更に一歩を進めて推理力を延長し見るべし。偶像が大衆より信仰されて己自らは暗黒の堂中に隠蔽されて塵埃に悩まされて、其塵埃すら払ふことを得ざるに、大衆は遠近を問はず足を運びて其面前に平伏すとせば、生きたる人間には今少しく偶像より力ありて差支なからん。汝等よくよく研究なして己自らの力の程度を上昇せしむる事に意を用いて努力し見よ。一枚の紙にわずか四五文字したためしお守りにすら及ばぬ事のあるべき道理あらんや。まして人と生れし幸(さきわい)には何か得なかるべからず。弱はきも人なり。強きも人なり。汝等の肉体より放射する気体の光明は鍛錬の力の程度に於て考へ及ばざる光明を放射なすものなり。此処に一つの例話をあげて参考とせん。
 或人旅に出でて山坂にかかりしに麓の茶屋にて一人の旅僧に会ひたり。旅僧の曰く、「汝今より此山を越えんとなすは危険なり。既に日は西に傾く。やがて峠に達せざるに暮れはてん。然して此山中には盗人横行なすによって汝の持てる物は奪はれん。愚僧の寺に来りて今宵は宿り、明朝早く峠を越えよ」とさとされて、旅人は彼の言葉に従ひて旅僧と共に彼の後に従ひて行けり。然るに行けども行けども寺と思へるものは無く、日は全く暮れはてたり、旅人は不審したれど僧の許を離るる気力なく余儀なく従ひ行きけるに、やがて一本の大樹の下にて僧は足を止めて曰く、「旅人よ、我寺は是なり。今宵はゆるゆるくつろぎて臥すべし」と。
 旅人の驚くにも頓着せず周囲の枝葉をかき集めて焚火をなし、飯櫃より握り飯を取り出し旅人にも与へ己も食して其儘ごろりと横になりて臥したり。旅人はおちおち眠れぬ儘にやがて其所にて夜を明したり。夜あけて僧は眼をさまし旅人の顔をしげしげと眺め居たりしが、徐に口を開きて曰く、「旅人よ。定めて驚きしならん。昨日峠の麓にて汝を見たるに汝には死相現はれ居たるを知りたれば安全なる処をと此処に宿をかりたり。然るに今汝を見るに尚死相は残り居れり。故に汝の行くべき方角は危し、されば此方角は変へざるべからず。今暫時我と共に旅せよ」と云ひけるに旅人の曰く、「我、日時の定めありて到らざるべからず。そは約せし人あればなり」。僧の曰く、「汝の約せし要件とは如何なる事なるか」。旅人曰く、「其は約せし人に渡す宝を持ち行くなり」。僧の曰く、「其宝を道にて奪はんと謀る者あらん。されば我法衣を纏ひて僧に変装して危難を避けよ」とてとある家にて、旅人衣類を取り換えて彼が顔を見て、死相の無くなりしに安堵して旅人に曰く、「死相は無くなりたり。我、汝の帰る迄此処にて待つべし」とて彼を出で立しめたり。日を経て旅人は帰り来り、僧の前に平伏して感謝して曰く、「我、汝なかりせば生命はなかりしことを聞きたり。貴僧の活眼実に驚くの他なし。恵みを深く感謝す」と。例話と云ふは是なり。

×

非ログインユーザーとして返信する