覚者慈音707  未知日記 第四巻  心霊雑話  伊東慈音

覚者慈音707
未知日記 第四巻      
霊の巻     
      至誠感通  
      其の2     
                   ミキヨウ貴尊講述


 さる所に信者ありて、神に供物を捧げんとしてあやまちて供物を覆すこと三度に及びたれば、此供物は神の厭はせ給ふならんとて、その供物を捨てたり。是を眺め居たるみすぼらしき一人の老翁、この供物を拾ひ集めて清めにきよめ、己自ら神の前に持ち行きて供へたり。信者是を見て大いに怒りてこの供物を取り下げんと、神前に歩を進めんとして倒れたり。又起き上がりて又倒る。斯くすること三度に及びて供物を下ぐることを得ざりき。故に彼訝りてみすぼらしき老翁にむかひ、
 「汝は何人なるか」と問へば、彼答へて、
 「我も汝と同じ信者なり」と。彼の曰く、
 「汝は我の捨てたる汚れたるものを何とて神に供するや」。老翁曰く、
 「捨てたれば汝のものにあらず。我、是をきよめたれば清くなりたるによりて、神は快く受け給ひしにはあらずや」と。信者是を聞きて大に憤りて
「神の欲し給はざるを知りてなり。然るを汝、我ものにあらざるものを尚神に供するは罪なり」とて彼を鞭打たんとす。
 此時、天の使天下りて止めて云ふよう、
 「汝鞭打つ勿れ。彼こそ真の誠にしてあやまれるは汝なり。汝の信は真の信にあらず。神は供物の善悪を望むにあらずして、清らかなる心の供物を望み給ふ。見よ。老翁の供物は汝下げんとして及ばざるにあらずや。汝、偽はりの供物をせんとなしたる故に、神は汝を警め給ひしと悟らざるか。老翁の信は真なりしが故に、神は嘉納し給へるなり。汝不審あらば来れ。我、明らかに見すべし」とて、老翁の肩に手を置けば彼の身体より光を発す。然して信者の肩に手を置けば、悪鬼出でたるにより、信者は驚きて伏したり。天の使、重ねて信者に云ふよう、
 「汝が神に供せんと思ひし供物は誰のものぞ。又誰に依って作られしものぞ。汝は人の手によりて作られしと云ふならん。人は種子を蒔きしにすぎず。所謂神の御力によりて斯くは育てられたり。されば神の作り給ひしものを神に供せるにてはあらざるか。すべては神のものなれば、神は敢て斯るものを望ませ給はんや。然るを汝は珍らしければ、神に参らせんと思ひて持ち来る。此心は悪しきにはあらねど、汝の心は乱れ居れり。神に奉る感謝にあらずして、誇らしき心なれば、神に恵まんとなすに等し。さればこそ汝は大地にすてたり。然るに是を見たりし老翁は、神の御力によりて造られたる物を大地に捨つるは恐れ多しと思ひて、是を清らかにし持ち来り、捨てたる汝の罪を深く謝したるにあらずや。然るに汝は是を鞭打たんとするは何事ぞ。恩義を仇にするや」と。信者聞きて深く恥ぢ罪を老翁に謝せり。天の使又曰く、
 「信者よ、汝、神を信ずる力薄けれども、汝の心清きを神は知り給ひて、汝をして真の信仰を得せしめんがために、斯くは計らはれ給ひしなり。老翁は常人にはあらざるなり」と。天の使は老翁と共に天界に帰りしと云ふ物語なり。
 


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