覚者慈音658  未知日記 第一巻  行法    伊東慈音

覚者慈音658
未知日記 
未知日記 第二巻      
有神論     
        その2
       
                 ミキョウ貴尊講述


 唯人間は弱きあり。強きあり。是を強弱一如ならしめんが為に、人間同志が談じて、ここに神と云ふものを組織し、然して悪業を犯さしめん為の方便にすぎず。所謂優勝劣敗を防がんとする一種の詭弁より生じたる結果、神を造り出せしに過ぎざるなり。依って我は神を信ぜず」
 ここに於て甲乙丙こもごも彼に応対せしかど、彼は信者達にあたり、甲乙丙の言にては彼を説得するに至らざりき。彼、曰く、
 「汝等、神を信ずる者よ。汝等は西遊記と云ふ小説を読みたることありや。一匹の猿が天界をあらし、地界をあらし、果は釈迦に捕はれて、長日月の苦を、わづか一人の坊主に救はれて彼が弟子となりて天竺をさまよひ歩き、魔法を以て種々なる喜劇を演じつつも、漸くにして釈迦の許迄達したるにあらずや。
 其間氷より数百倍冷たき水に投ぜられ、或は炎熱より数万倍せる熱度にやかれしも、彼は死せざりき。今の世にも学者によって、此氷より冷たき火熱より尚熱きものは、人間によって作られつつあるにてはあらざるか。神と云ふも、人間の智慧の現はれなるべし。智慧の厚きものは神なりと云ふならば、我は神を信ずべし。然れども其他には神なしと云ふも、過言にはあらざるなり」と、彼は結びたり。
 此時丁なる信仰者、唯始めより微笑を洩しつつ聞き居たりしを、甲乙丙の信者、彼に向かひて曰く、
「汝は何故に始終笑い居て、一言だに発せざるや。汝も無神論に化せられしか」と、
詰問せしに、丁の曰く、
「我は彼の如く種々様々の行道を犯したることなければ、彼に反撥する力なし。されど我が心の親は、我に語りて云ふ。汝、彼の言葉を信ずる勿れ。彼の言葉はすべて虚勢なりと言ひたるによりて、我は彼の言を信ぜず」と。
 此言葉を聞きて彼の無神論者、忽ち駈けよりて丁の手を握り、
「汝は真の信者なり。我、今迄語りたるは虚勢なり。偽りなり。我は無神論者にあらず。唯此処に集れるものの信仰の力を験さんとて、斯る暴言を吐露したるに過ぎざるなり。然るに汝の心の親は是を知りて、我を看破す。他の多くの者の信仰うすきは悲みに堪えず」とて笑いて去りしと云ふ。



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