未知日記　第十巻　帰途案内記　　　　　　　
巻の一
大序の巻　
NO ２５
セイキョウ貴尊　講述
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　今汝等の住める世界を十流界と見なすならば、向上して九流界に或は八流界七流界と階を重ねて、宇宙の進歩を計らざるべからず。是広き意味の社会運命開拓の方法によってなし得らるることも考慮に入れよ。一人の運命を開拓するは百人千人の運命を開らく基礎なるべし。我のみ向上して他を虐ぐるは是慈悲にあらず。我進みなば他も進まする慈悲なかるべからず。一家得度せば九族天に生ずるの理はここにあるなり。是即ち慈悲の根本なりと思はば可なり。己、法を知りて自ら渡らずともその法を用いて衆を先に渡す。是慈悲なり。人間の性(さが)には向上する心を植えつけられあるなり。世人は世人の多くが虚栄心を強くしあることによってもこの理は察せらるるならん。然るにこの虚栄心を応用して進歩発達を計らず徒に空想にのみ走るが故に虚栄となりて役目を果さざるなり。人として虚栄心なきものあらんや。是は天より授けられる大切なる宝にて、他の動物の有する虚栄心とは全く其意味を異にし居るなり。故に人間は他の動物と異なる心を有し居るなり。虚栄心のみを発達さするはこれ雑草を繁らすと同様にて手もつけられぬ厄介となるなり。虚栄心の雑草をぬきて是を肥料となし、然して大切なる人心を育ててこそ、向上の望みは達せられることに思ひを致さざるべからず。天の使命を果すと云ふは即ち是なり。
　時間空間を有する汝等が世界なるによって今日あらば明日来る。現在あれば未来は来る。我等の如く時間空間なきが故にかかる三世論は意味をなさざるなり。されば三世なき我等が語ることを真と思ひて信仰せば、汝等の心に光明は輝きて三世は消滅し、凡ては現在となることに留意せよ。世人はこの意味を解することを得ば正しき信仰は得らるる筈なり。一寸先は暗の夜と云ふ俗言あり。是時間空間を有する世界の言葉なり。是を時間空間なき世界に住む我等に云はしむれば斯ることは空説にすぎざるなり。ミキョウが講話せし三世と四世は我等が世界の瞬時にすぎざるなり。何となれば時間空間を有せざる世界に三世四世の区別あらんや。我等この世界より時間空間を有する汝等が世界を観望なすによってこそ、すべてを見通すことを得るなり。汝等も早く覚醒めてこの処に来れ。然せば一目瞭然にすべてをきはむることを得ん。肉体を有する間にこの行をなして然して体得せよ。肉体亡びての後はこの行は至難なる故なり。この行をなさんとせばその方法としては時間空間距離の考へを打破するにあらざれば得難し。さればこの観念を早く捨てよ。然せばすべては明らかならん。