未知日記霊話集  第六百六回  帰途案内記  転界の巻 八流界の例話  セイキョウ貴尊講義

覚者慈音1286
未知日記 第十巻 帰途案内記       
巻の三
上界の巻 
NO 141
八流界の例話


                 セイキョウ貴尊 講述

 小児に誘はれし彼は未だ正しきさとりを得たるにあらざるが故に、誘はるるがままに従ひたるなり。さて神の許に至りて、神より汝、何のために我に来りしかと逆問せられて、彼の心はここに至って粉砕せられたるなり。今迄神になりて何になる事ぞとの明らめは、忽ち打ち砕かれて、名伏すべからざる無言詞の居に達したるにて、ここに始めて迷夢をさましたる形となりたり。されど迷夢さめたる位置におかれても尚、不安は残り居て真の明らめを得られざるが故に、彼は汝の招きに従ひて来りしとの答へをなしたり。然るに神は我汝をよびしことなしと仰せられたれば、彼は神に対して汝、神として我に偽はりの言葉を発するやと、逆襲することすら言ふあたはず。唯口ごもりて驚異の眼を見はり居たりたるにすぎざりしなり。真理はここにあるなり。是に関して尚もくはしく語りきかさん。
 世人は神の意志をくみとる事を得るや。何故よびし事なしと仰せられしやを知るならば、ここに何か潜在なし居る大なる真理を探り求めざるべからず。神の言葉には虚偽を表面に現はして、内部に真実を有せしめたることに、考慮を払はざるべからず。表面は虚にして裏面は実なり。即ち招きたるにあらずして招きたるなりと云ふ言葉に帰す。招かざるに彼は来りたるにあらざればなり。世人は此意味を解する事を得るや。斯る事は我等も多く用い居る一種の方策にて、所謂是を方便の嘘と云ふなり。嘘とは虚偽にあらず。汝等は嘘と云へば凡てを虚偽に帰するによって、ここに誤解すること多し。汝等の言葉に、嘘より出し真実と云ふあらん。即ち真実を潜在せしめて表面に嘘を現はす。是を虚実一体と云ふなり。世人の多くは虚実一体なるが故に、言行は一致せざるなり。例へば醜き人を見て汝は美はしき人なりと世辞言葉を以て、彼に接する如きは実嘘一体の言葉なるによって、真実から出し嘘と云ふ結果となるなり。我等は世人を実に化せしめんが為に、虚を以て汝等を導く事も、時によりてはなすことあり。斯くの如く神は彼を招きて、虚を以て実を現はし給ひしなり。彼、神の許に来りし以上、虚実何れにもあれ来りしは実なり。されば神にさとりを与へられたるにて、所謂空を実に変へ給ひしことに、考慮を廻らさざるべからず。

×

非ログインユーザーとして返信する