宇宙からの訪問者 NO20  小説 ある星の奇形児の話

 君は今迄の僕の話を聞いて不思議と思うかもしれないけれど、現に僕達の世界で生まれた子供達は、お母さんのお腹におる時から、自分が何故この世界で生まれてきたのか、その由来曲直のすべてを知っているんだ。ということは、その子供達が前世でどのような生活をし、何を目的として、人生を過ごしてきたのか、そのすべてを知って生まれてきたわけだ。彼等は生まれてすぐに自分の任務を知り、両親と語り合うんだ。まるで君達の尊崇する釈迦が七歩歩んで、天上天下唯我独尊を叫んだのと一緒みたいだね。実際、僕達の星よりももっと進んだ世界の子供達は、君達地球世界で智者、聖者と呼ばれている最高の知性を持っている人達と同様の知性を持っているんだ。もし仮に、その星の幼児を君達の世界に連れて行ったら、みなの眼はくらみその威厳に打たれて、顔さえあげることが難しいほどだ。ましてその世界の大人の人が諸君の目の前に現れたなら、これぞ真の神となりと誤認することは間違いない。大人ともなればどれほどの智慧をもっているか想像もできない程なんだ。でもこの人たちは真の神ではない。進化なしたる人間に他ならないんだ。これは僕達の世界より僅かに一段階上の世界の話だ。如何に僕達が修養修行が至らぬため、死んだ生活をしていたかをよくわかるだろう。雄哉君、これからは身を慎み、早く、前途に希望をつないで、生きる旅を長く長く続けることを願うべきだ。なぜなら肉体人間としての一生は100歳位を定命としてそれで終わるけれども、魂は未来永劫不滅だからだ。
 さて君にある星に伝わる伝説を聞かせてあげよう。
ある時、その星に奇形の人間が産まれた。その両親はそのことを恥じて審判所に訴え出た。可愛そうにその子供は眼は三っ、両手、両足はそれぞれ四本もあった。全く見たこともない男の子であったそうだ。そこの審判所の長老が云うのには、「その赤子はやがてこの世界を救う偉大な救世主になる方であろう。大事に大事に養育せよ」との言葉をその両親に語った。そしてその子を長老はクラーアズと命名した。その名の由来は偉大なる智慧の塊(かたまり)という意味がある。軈てその子は幼くして、その世界の学問のすべてを習得し、誰に教わることもなく、新しい発明、発見を次々と発表し、世の中に広く貢献し、その星の文明をたった一人の力で大きく塗り替えて飛翔させた。それは経済学から物理学、農業、建築などありとあらゆる科学分野にもおよんだそうだ。たった一人の人間がその世界を根底からレベルアップさせてしまったんだ。凄いよな。今でもその星では賢い子供が生まれると、「ああ、あれはクラーアズだ」とその再来だと呼ぶ風習がいまも続いている。彼の三眼、そのうちの一つは誰もが見えないものを見る力を賦与されていたんだ。それが彼の力の源泉だったのさ。この荒れ果てようとしているこの地球にも早く第二のクラーアズが生誕して欲しいものだね。そうは思わないか、雄哉君。

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