こだま会講演日記    第九十二回   坂本通博 筆記

三月八日


人間は何かたよりにするものがないと淋しいもの。
子供に親がなかったら経験のない人にはわからない寂しさあり。
子は親によりかかり、長じては夫婦として男女たより合ふ。
生涯連れ添って居られればしあわせ。一方が欠けるとこんな淋しい事はない。
人間一生涯のうち何かたよりにするものにすがり度いと言ふ心持あり。
肉体の中で心が右に左に上下に迷っている。よりかかって安心出来るものがないと淋しい。
よりかかるものが必要だから仮に神仏等をきざみつけてそれで安心し様とする。人は別れ別れになり当てにならぬ。故に己と離れない仏とか神とかを必要とする。これは人情、人心(ひとごころ)。
名僧智識聖人君子でもやはり同じ。母が恋しくな人間の本質。親子は気によってつながっている。何かわからない気分によってつながる。
魂は自分のからだの中でぶらぶらと迷っている。皆は浮遊魂を作っている。
過去現在未来は肉体にあるだけ。精神にはない。
すべては過去の連続、現在の連続、未来の連続。
皆は浮住魂で居る。だから今のうちにそれをもって行く所をこしらへねばならぬ。
あっち行ってはなぐさみ、花を見て、美食して、楽しみ等してふらふら瞬間的ななぐさめを追って迷って居る。
数を有せぬ〇にまで帰って、安心して居られるまで修行すべし。
愛情、恋等はすべて気。
零から生まれた〇、マルから生れた一と言ふ事になる。
これがすべてのものを作る。ここに尺度計がある。
大自然に順する事を神まかせと言ふ。
絶対自然にまかせる境地になれよと言ふなり。
神を実在としてさぐるは不可。形ある神はうそ。
自然の大義を知ってそれに順ずる方法を伝へるのが私達。
全宇宙の大自然は之に順応する事によってどんな事でも出来ないと言ふ事はない。
その魂を今日は花見に、明日は月見にとふらふら迷って居ては浮遊魂。
芸術家は芸術によりかかって修行すればよい。芸術によって肉体を愛してやる事。
芸にばかりとらはれて肉体を粗末にするから中途で倒れる事になる。身心霊一如となり芸術によりかかって居れば、迷はないで人道が全う出来る。
皆の心は朝から晩までふらふら浮遊魂でふらついて居る。
肉体の中をくるくる心が廻転している。
之で死んでは動物性で終る。肉体のある間に、魂がぶらふらしない様に出来る組織のある肉体のある間に、魂の行くべき所を定める事。
肉体失せても魂が迷わぬ様に工夫すべし。
之には尺度計が必要。
〇のない〇に迄返さねば自然に順応したとは言へぬ。


泰岳ミキョウ貴尊講義


和気藹々、愛すると言ふ事があるが、
和気とはどんなものか。
人間は気と言ふものがなければならぬ。(いきと言ふ位である。)
気によって人間は生きて居る。
人盛なる時は天に勝ち、天定まって人に勝つと言ふはこの辺の所を教へたもの。
皆はいささかの事で気を落とす、落胆する。
いささかの事で泣いたり怒つたりわめいたり。
之は気が平静でないから。気を平静にして居ないと事に処して役に立たぬ。
あきらめが大事。之が仲々出来ない。聖人君子でも本当のあきらめは出来ない。
気はどこまでも限度がないからである。
然し気は遠い所にあらず、身辺どこにでもあるのは気。
あいつらの言ふ事がカンにさわると言ふも気。
神は気であると言っても過言にあらず。
気を発せしむるもとが神ではないか。
終始のない世界が神の世界。
何となく気の感じで今日は悲しい日だと言ふは肉体作用。
肉体はその時々の気圧の変化により様々にかわる。神経過敏の人は之等を敏感に感じる。
肉体はたましひや心が抜けてしまへば分散してしまう。そしてそれぞれの位置にかへる。
たましひがあって、たましひと肉体との間に心がつながる。
心は気体、たましひも気体、肉体も気体。
肉体にとらはれて居ては魂をおるすになる。
肉体と魂により心がつながれて居る。
たましひの放送を肉体と言ふ受信機に感じる。この感じ方が皆異なる。
之は波長の相違。
たましひの奥に霊がある。
たましひなければ心は働かず。
心なければ肉体神経は働かず。
先ずたましひを知るには、自分に与えられて居る肉体神経と、外部から注ぎ込まれて来る外気によって、自分の肉体がどういう風に変化するかを考へて見る事。
そうして居ると想像力が出来る。之を伸ばして行って、ああこれだと感じた時はたましひの働き。
物を奥深く根にかへして考えへたら根は清らかなもの。
純潔な根までかへして考へたら根は清らかなもの。
純潔な根までかへして見て之を心の鏡にうつして見る。
たましひにかへしてしまへば肉体を切られても痛みは感じない。たましひの考へにまですべてを考へる様になったら痛みも感じない。死んだも同じ。
物を考へて居る時はつねられも痛いと感じる間はまだ心の働き。
心頭を滅却すれば火も亦涼し。
冷熱は青道心の知る事にあらず。

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