覚者慈音１５９３
未知日記　第九巻　因果論　　　　　　　
第四の巻
心霊篇　
第五十六　　　　　　神通力と人通力の関係　　　
　　　　　　　　インショウ、ミキョウ貴尊講述
　　　　　　　　　　　２０１９・１２・２０

　自在論に於て語られし如く己の天職を守りながら道を行ぜよとの意味を説かれあることに注意せよ。人通力は如何に大なるはたらきをなすとも、神通力には及ばじ。然して人通力は万人悉くが行はるるものにあらざることは此理によっても明らかに知るならん。人には神より授けられたる天分あり。その天分をばはなれて他の事を学ばんとすともなし得ざるは、神の力の強き故なり。即ち是ぞ神通力なるが故なり。芸に秀でて名人上手と云はるる人は、即ち天職を全うしたるにて是等は正しく神通力を受けたる人なり。世人が崇拝なし居る釈迦イエスは万芸悉く通じたるものあらず。唯万芸悉くの道理を知るにすぎざる人なり。其等のすべてを知るによってすべてを救ふことを得るなり。唯知るにすぎず。かかることより考へ見ば神より授けられたる天分は如何に力強きものかを理解することを得るならん。もし釈迦が大工として家を建て居らば世は救はれざるべし。唯大工と云ふ人にて終りたるならん。されど釈迦には釈迦としての天分ありてその天分を全うしたるにすぎず。イエスに於ても亦同様なり。教典などにあらはしたる種々様々の奇蹟はみな人通力に属す。その人通力は神通力より受けたる法を行ひたる結果に他ならずと知らば可ならん。一芸に秀でてその蘊奥をきはめたる人ならば、他の事柄に対してもその芸の徳にて、道理だけは明らかに知ることを得るなり。唯行ひ難きのみにて道理は、己が芸に比べてよくすべてを理解する力は備はるものなり。いささか言葉の言ひまわしが至らざるによって世人には解し難からん。されど此至らざる言葉を二度三度くり返へして考慮工夫し見よ。然して己の持つ個性にこれを引用しなば、何か己が心の中に潜在なし居る智慧のはたらきが、自づと汝の心に深き感銘を与ふるならん。唯訳もなく不明瞭の言葉として是を等閑に附すること勿れ。解し難ければ幾度となくくり返へして考へ、考へては読むべし。然して己が心に映じ来る智慧の徳にあづかれよとすすむるものなり。