覚者慈音１４００
未知日記　第九巻　因果論　　　　　　　
第一の巻
人身篇一　
　　　　　　　　　インショウ、ミキョウ貴尊　講述　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１９.９.０８
　第三　　　原因に逆上って結果を観よ

　大凡因果の道理歴然として私なきは当然なれど、経路に於てあやまちを醸せば善因も悪果となり、又経路に於て是を正しく行ふによりては悪因も善果となる法も察せらるるならん。正しきものを不正に導き不正のものも正しく導くには経路に於て或一定の方法を構ぜずば成就するものにあらず。因果の中に於てはその経路に対して正不正の如何によって是を左右する力と方法があるによつて善因も悪果となる。されば是等に関してよくよく考慮せずば善因も悪果に終る悲しみとなる道理あるなり。宗教者の称ふる如く善因善果悪因悪果と断定することは経路も是に順じての事にあらざれば断言することは難しと我は思ふなり。故に原因をたしかめて後経路を正しくしてのち結果を見ざれば、因果の果は如何にと定むることは難し。されば原因より結果に至ってその現はれの善悪を認識せんとならば、先づ経路の如何をよくよく判定する力備はらずば確定することは至難なり。すべて世人の住み居る世界には貴尊方が仰せられし如く相対なるが故にすべては唯因果の現はれとして処理すれど、宗教者の称ふる如く造悪の者は墜ち、修善のものは上るとのみ断定することは難し。是は唯教へによって衆生を善道に導く方便にすぎざるなり。人間の幸福は結果に於て現はるとのみ断定することも亦正しとは言はれざるなり。悪き種子は稔りも亦悪しく、よき種子は稔りも従ってよしとの理は是当然なるべし。されど悪しき種子を以てよき実を結ばするは是法にして神の許し定め給ひし処なれば善を善として実を結ばするは易く、悪を善に帰せしむるは困難なり。善を導きて倍加に倍加したる善の実を結ばすることは是又法にして、又是もむづかしく至難なり。されど法はなし得る道理あらん。何となれば悪を善に化せしむる法あらば善も亦倍加せしむる法もあるによってなり。されば原因をたしかめて是が悪因果善因果の区を見きはめて育つる方法にはそれぞれの術を用いてのち、是を育て結果に至ってよくよく見きはむるにあらざれば因果のすべてを究めたりとは云ひ難し。