覚者慈音１３９９
未知日記　第九巻　因果論　　　　　　　
第一の巻
人身篇一　
　　　　　　　　　インショウ、ミキョウ貴尊　講述　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１９.９.０７
　第三　　　原因に逆上って結果を観よ

　原因より結果は得らるるは世人の知る処ならん。然るにややもすれば世人は経路にのみ囚はれて原因と結果を観察する思慮分別あらざるため或はかこち或ひは呪ひて世を安からしめず、常に迷ひのみ多らしめ居る事を我等心配なし居るものなり。前講にも語りし如く経路をあやまたしめずば斯るあやまちは現出するものにあらず。さりながら原因をよく観察しその因種をよくよく考察して、然して他の結果を得んとなすならばそは不可能の事にあらず。されど原因を仔細に観察してよくよくその因種の素質をきはめて他のものに変ぜしむる経路を求むればその終末は正しき結果を得ることも亦至難にはあらざるなり。農夫が政治家たらんとする如きは、是原因をたしかめずして縁なきところに歩を進むるによって稔りは完全ならざるなり。さりながらその原因をよくよく認識して己が本分をよく覚りて、然して農に関係ある政治家とならば其は成功することも亦難きにはあらざる道理あるなり。例へば農夫が農に関する政治家となりて農に関する大臣とも進まば或は成功もなすならん。其がその本分を捨てて他の大臣ともならば必ず失脚することは、原因を離れて他に転向したる故に結果は全からざる道理あらん。すべて天分をよくよく観察し其によって相当する道を択ばずば目的は達しがたし。されど己自らの天分を明らかに認識することを知る人はすくなし。唯人間は世間の優れたる人を見て、己もその人の如くならんと思ひてその道に順ずる人は多けれど、己の個性を深くさとり知りて道につく人は稀なり。故に正しき道を択びたる人は好結果を得れど、然らざる人は迷いのみ深くして目的を果すことを得ざるも是原因より観察せざる故に結果を見る事は至難となるなり。善因善果悪因悪果の法則は誰もが疑はざるところなれど善因悪果悪因善果の現はれは是何によって生ずるかを究めたる人は少なし。善因善果悪因悪果ならばそは是非もなき事と諦らめは得らるる事もあらん。されど善因が悪果に終りたる時、そこに何か割り切れざる悩みとなりて是を諦むること難きも亦無理ならぬことなるべし。