覚者慈音1273  未知日記 第十巻   帰途案内記  巻の三   NO 129  上界の巻 セイキョウ貴尊講述

覚者慈音1273
未知日記 第十巻 帰途案内記       
巻の三
上界の巻 
NO 129
          
                 セイキョウ貴尊 講述
                    2019.8.07


 余事は兎に角九流界の下部に於てすら最早衣食住、或は恋愛等の如き影は見度くとも見えざるなり。例へば住居なし居る家に於てすら、雨風震災等の防止は完全にそなはりありて何等の不安なく、衣に於ても亦同様にして醜美の隔りありて、人の眼をひく如き愚なるものなければ、他より妬み怨らまるることもなく、更に食に至っては是又肉体を損傷するが如きものを、口にするもの一人としてあらざるが故に、安らかにその日を過すことを得てにら何等の不安もなきなり。恋愛に於ても又然り。一夫一婦にて他に情欲の観念をもつ如き愚なるものなければ、男女共に汚し汚がさるる如き心配は毫もあらざるなり。もとより斯る下部に於てすら既に通貨の約束あらざるが故に、国土を田より犯す者も無く家に志のび入る盗人なければ、奪はるる恐れもあらざるなり。故に人心は安楽にて罪人もあらざるが故に獄舎の必要もなく、又殺人などの如き愚なることをなすものなければ、縄とる人もあらず。故に裁判人(さばきびと)などあらざるなり。されど此界は智慧の競争が余りに激しきが故に、是非を判断するものはあれど、其に依て処罰を受くるものにあらねば、獄舎のなど云へるたはけたるもののそなはりは不必要となり居るが故に、斯るそなはりはあらざるなり。是等に関して二三を語りて世人の参考になさん。
 世人の世界は通貨によつて生活を営み居るが故に、蓄へ多きものと貯へなきものとの相違は深刻なれば、従って肉体上より受くる嫉妬心は激しくなりて、為に羨み妬みの心を起し、其が嵩じて殺伐に迄及ぶ。是に反し九流界の下部に於てすら、肉体生活の悩みは毫もあらず。其は即ち通貨なく身分の隔なきが故に、すべては同一生活に置れありて富貴の隔なければ、妬み怨みの心を生ずる筈もなく、故に肉体生活に於て争ひ等の醜態を演ずるもの耐えてらざるなり。是が他の動物等に迄波及して、猛獣なども温獣に化せられ、獣類に至る迄すべて安らかなるが故に、彼等すら牙を研ぐもの一としてあらざるなり。此界の人は獣類の長所短所をよく研究して是を巧みに応用し、種々様々の企業に使役なし居るなり。もとより此界の人は動物を屠りてその肉を喰ふことをなさざるが故に、動物は人を恐れず、安らかに人になづき、その命令に服従して嬉々として働き居るなり。

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