未知日記霊話集 第千七十五回 光明論 下巻 巻の七 心意魂魄四心一体となり、是には加はる霊の輝きありて茲に初めて人間の人間たる任務は完全に果さるるなり。然るに此四心を一体ならしめある人の少なき理由は修養修行の誤てる結果に他ならず セイキョウ貴尊講義


未知日記 第六巻 光明論       
下巻 光明論 巻の七 
教主講、セイキョウ貴尊解説
悟道篇  下
四心一体となりたる霊光とは如何なるものか
二人の徒弟の例話


                セイキョウ貴尊 講述
                

 心意魂魄四心一体となり、是には加はる霊の輝きありて茲に初めて人間の人間たる任務は完全に果さるるなり。然るに此四心を一体ならしめある人の少なき理由は修養修行の誤てる結果に他ならず。もとより是について此四心の説明を詳しく教導せし指導者も乏しく、又是等の理論を完全に説明したる書物も少なかりし結果にもよるならん。されば汝等今日迄学び来りし理論より一段の工夫を試みて深く研究せば、更に新しき道を開拓することを得ん。然して後輩者の為に指導者たらんことを願ふべし。
 そもそも心意魂魄一体となりたる有様は恰も区分したる貯水池の境界を開放して一に帰せしめたると同様の如く思はば可なり。四心一体とならば心意魂魄の区別を測り難き底となさざれば完全無欠の統一とは云はれざるなり。円海老が初対面の人を見て其人の姓名を知ると云ふも四心の明鏡の威徳によるなり。斯ることは魔法にもあらず、又神懸りにもあらざるなり。明鏡に映るに依て知る迄にて他に法力等の行ひあるにあらず。四心一体となるに依て初めて自由の働きは得らる。物を見るにも肉眼と霊眼は自由に開け、肉耳霊耳は自由に如何なる処の声をも聴き、霊眼霊耳には距離なければなり。四心悉くに霊光は感ずれども個々別々となれば霊光の輝きも個々別々となる故に、働く力も部分的となるに依て働きも亦軽小となる。心の霊、意の霊、魂の霊、魄の霊一致団結して働かば従って其力は広大となるは異論の余地なかるべし。心のみの悟、意のみの悟、魂或は魄のみの悟は一方に偏る悟なれば正しからず。故に四心一体となりての悟にあらざれば正しき悟は得られずと云へる理由も亦うなずき知ることを得たるならん。
 昔深山に仙人道場ありて二人の徒弟、幽谷にて水行なし居たるに、下流より一人のみめ美はしき女登り来りて彼等に向ひて云ふよう、「我ははるか離れたる里の者なるが、母の病篤くして薬草を得んとて高山に来りたり。されど此処よりは女人禁制と聞く。願はくば母の為に許して進しめよ」とさめざめと嘆くを、一人の徒弟暫く彼女を眺め居たりしが傍の杖を執りて、「汝は此山の秘密を探らんとして来りしは不都合なり。眼に物見せん」と杖を振り上げしに、今一人の徒弟是を止めて女に向ひて云ふよう、「汝、静に下山せよ。汝の力量にてはこの道場の秘密は探り難
からん。何となれば我等如き拙き者の為に看破せらるる汝の修行にては、焉んぞ得る処あらんや。今一段の修行し来れよ」と温情こめてさとせしに、彼女忽ち変じて師の坊の姿現はれたれば二人は其場に跪きたり。師の坊、声を柔らげて、かのさとせし徒弟に向ひて云ふよう、「汝の修行は半達せられたり。さりながら彼女を我と知りしか」、彼曰く、「知らざりし」と。師曰く、「斯る時今一層霊眼を深くせば我の姿は見ゆるなり。今一段の修行せよ」と。更に杖を取りたる徒弟を誡めて是を鞭打ちて去りしと云ふ話なり。
 即ち杖を取りてる徒弟は未だ正しき悟を得ず。魂(こん)のさとりのみなるによって杖をふるいて追ひ返へさんとなし、一方の徒弟は魂魄一体のさとりを得たるにより打つべからずとの慈悲心を起したるなり。されど未だ霊光に浴する修行迄至らざれば師の坊は汝の行は半と云ひたるなり。斯く語りたれば汝等は疑問を生ずるならん。そは止めたる徒弟のさとりは魄のみの悟ならずや。魂魄一体の悟ならば霊光は伴ひ来るとの教へより見るも、我等の疑問は当然ならずやと。よくぞ申したり。然り、然るなり。さればこそ是に対する疑ひを晴らして此講を閉づる事とせん。
 行者の修行は心意を先とし、やがて魂魄に及ぶなり。先づ心を清め、意を清め、然して魂を清めて魄に及ぶなり。故に此二人の行者は既に魂の行終りて魄の行を行ひ居たることは師の坊の言葉、或は女の心を看破したるによりても明白に知らるるなり。汝等の修行の法はあやまてるより変調を来すことあれども、行者の行は規律正しく行はるるに依て決してあやまちを醸す事あらざるなり。行者の未だ霊光の伴はざるも魄の修行中なることも知らるるならん。此話はテッシン貴尊が此次の講話する大悟録に必要なれば語りをけよと、我に命じられたるに依て、茲に其大要を語りたるなり。されば汝等次の巻大悟録に於て貴尊の教へを受けよ。我はこの巻をとぢて退くべし。
            (昭和二十一年三月一日~四月二十三日)

×

非ログインユーザーとして返信する