未知日記　第十巻　帰途案内記　　　　　　　
巻の一
大序の巻　
NO ５２
心と魂の区別
セイキョウ貴尊　講述
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　喜悦の心を誘導するものは魂の力なり。哀怒を誘導するものは、魂を知らざる心の現はれなりと知らば、心魂の区別は認識する事を得るならん。
　心魂の区別判明したらば更に、一層深く掘り下げて考へを廻らし見よ。其魂なるものが斯くも大なるはたらきをなすと云ふは、其は如何なるものの力によるやとの考へならざるべからず。前書をよみたる人は其は霊の力なりと知り居るならん。されど宗教心なく又智慧うすき人は、斯る事は考へし事もあらざるべし。一般人は表面に現はれて種々様々のはたらきをなし居るものを魂と思ひ居るにて、其以上の考へを以て深く追究し居る人は稀なり。故に魂とか霊とかなど云へる事柄に対しては宗教くさく考へて、斯る事は老人の隙つぶしになすことにて、我等日々の生活に追はれ居る間かかる娯楽的の事はなす暇なしとて放棄し居るは、是みな小さき肉体に囚はれて、世の中の向上発展をなさんとの智慧に欠けたる、動物性人類なりと罵らるるとも、一言の答へをなすことを得ざるべし。世界人類を向上発達せしむるには、すぐれたる智慧そなはらずば為し得るものにあらず。其大切なる智慧とは何によって生ずるや。又何によって求むるやに思ひを致さば、日々の世渡りは智慧なきものにては過し得るものにあらず。智慧なくして徒らに一生を終らば人としての任務ははたさるるものにあらずと知らば、空なるものに重点を用いずばその智慧は得られざる理も従って察せられるならん。大発明大発見と称して様々の変りたるものを世の中に現出せしむるも、みな空より生れたる智慧の現はれにてはあらざるか。汝等全宇宙のそなはりにはその大発見大発明の完成をなさしむるすべての組織あることを認識せよ。空の智慧さへそなはり居らば、宇宙の否全宇宙の姿はなしてならざる事なしと云へる程度に迄、すべては完備し居るが故に、如何に智慧を磨くとも尽きる処あらざるなり。磨かば磨く程智識は加はる。その智識の加はるは何によってかを深く考慮せよ。智慧は空なり。空なる智慧は何処にはじまり何処に来り居るやを先づ考慮せよ。