覚者慈音１１７８
未知日記　第十巻　帰途案内記　　　　　　　
巻の一
大序の巻　
NO ３４
　　　　　　　　　　　　　　　　　　セイキョウ貴尊　講述
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１９.７.１６

　信仰の度を強うして智慧を磨き居らば汚れは附着するものにあらず。故に汚れに染まざる底の信仰ならでは、正しき信とは云ひ難し。自然に順応して自然に同化なし居らば汚れは附着するものにあらず。汚れの附着するは自然に逆行するが故なり。斯く語らば世人は云ふならん。我等日々自然のままに世をすごし居らば肉体は垢づきて汚れのみ多くなるにてはあらざるか。是を日々除垢せしむるによってこそ清くなるにてはあらざるか。自然に育ち居らば斯くの如く垢づく垢をおとすは不自然ならずやと理窟を考ふる人も多からん。
汝等斯る理窟を聞きて尤もと考ふることはあらざるべし。斯る考へをおこす人は、正しき自然に順じ居るにてはあらざる故なり。汝等の世界を汚界と称へ居るはここなり。所謂汚界に育ちて垢づくこと勿れと云ふことを教へたるは、即ち泥中の蓮の譬喩ならん。よって此理窟に対して解決の説明はあたへざるべし。云はずもがな理にあらざるが故なり。又我、語らずとも世人はかかる愚言は取り上げざるべし。円海が語りたる彼の友泰岳と云へる愚者が日々衣を洗ひ肉体をきよめ居ると云ふにても、世人は既に承知し居る筈なり。信仰に於て垢づかざる底の信仰なるが故に、是が肉体に迄及び居ることに心附かば、垢づかぬ信仰とは那辺にありやも自づと察することを得るならん。


　信仰の度強きが故に泰岳は天界を明らかに知りたるなり。故に泰岳は他より欺かれず一路天界に上りたるなり。他の徒弟は泰岳を欺かんとして却て己が心を傷け、その傷ける心を更に泰岳によって治癒せられ居たることも、是みな信仰の度つよき現はれの結果なりと知らば、信仰の如何に大切なるかを考へ見よ。求めて信仰を得んとせば信仰は来らず、求めんとなすとも信仰は汝に具はりあるなり。求めんとするは信仰を離れて心を他に転じ居る故なり。所謂信仰は汝に具はりある故に、是を引き出して用ゆる方法として、拝みと云ふ鍵を用いて、潜在なし居る箱の蓋を開らかば、取り出すことはいと易し。閉じたる扉を開らく鍵は即ち拝みにあるなり。拝む心は法なり。鍵なりと知らば可なり。又信仰の度をたかむるも拝みならざるべからず。信仰を燈火とすれば、拝みは油の其の如く、拝みたゆれば燈火は消滅す。燈火を持続せんとせば油の断えざる要あるべし。故に拝みは信仰に対してのすべての用具に合ふと思ひて、間断なく拝みして信仰の光を強ぅし、智慧の度をたかむるに不如と思はば可なり。