覚者慈音375

未知日記 第十巻  帰途案内記




                      その31
 五流界の伝説   五味の木について


                           
                       
セイキヨウ貴尊 講述


 我、今次の論旨を語らんとなし居る時、テッシン貴尊が我に向ひて曰く、リョウジャ、セイキヨウ、汝、何故魂界の人類の様をくはしく説明せずして、枝葉に渡りたる教へをなすによって、却って下界の人類を迷はしむること多きを考へざるか。汝の意中は我よく知れど再童慈音及び欣情にも徹すること難かるべし。魂界の人類の事柄をくはしく語りて後、味の論旨を語るならば理解は速なるにてはあらざるかとの仰せを受けたり。我是に対して応答する術を知らず。何となれば貴尊は我の意中を諒解せられたる上の注意なるが故なり。即ち我の論旨は前後不調なりしため、ここに注意を受けたることに気附きたれば、是より論旨を前に逆上って語る事とせん。
 即ち貴尊の仰せられしことは魂界の人類は、如何なる任務をなし居るかと云ふ事柄を先に語りをきて、然して後に味のある事を語れよと仰せられたるなり。既に魂界ともならば、唯安楽に楽しき其日々々を送り居らば其にて可ならんに、尚其以上の任務ありやと云ふことなり。此界は猛獣毒蛇の襲来はもとより、すべての黴菌に至る迄、人類に対して危害を加ふるものもなく、其のみならず猛獣毒蛇と雖も互いに争ひを起さず、家畜の如く働き居ることは、六七八流界と同様にして、何等害を加ふるもの一としてあらざるが故なり。然して植物等に於ても虫についばまるる事なければ枯るる事もなく、花開く頃は美はしきを見せ、結実も亦見事なるものを稔らせ、動物にあたへ居るなり。されど人類はかかるものを食するものあらざるが故に、動物は是等のものを食ひて何等餓ゆることなければ、互いに争ひをすら起さずしてすべての動物悉くが、平和にその日を過し居るなり。かかる安らかなる処に於て既に人類としての任務は、其以上何をなし居るかと云ふ事に対して、世人はその後の何をなし居るかを知る事を得るや。世人ならば其以上の安楽はあらざるが故に、唯空しく暮さば可ならんと思ふならん。されど是は肉体の任務が終りたるにて、智慧の任務が終りたるにあらねば、未だ人間としての使命を果したりとは云ひ難し。されば人の人たるべき任務はこの後にあるなり。
 他の動物と異なるところはここに存す。動物は此界の程度迄は発達すれば其以上は進化せざるなり。すべての動物は人によって化せらるれど、己自らの個性を知らざるが故に、己より智識を得て進化する能力のそなはりあらざるが故なり。悪魔は是を知るによって人魂を犯して是を傷け、然してその傷つけたる魂を動物に移して是を育て、然して己が世界を魔に化せしめんとはかる底の企画をなし居るもあるなり。故に人類が悪化して転落すれば、即ち動物魂に化せられると語りし説も自づと察することを得るならん。



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