終生忘れ得ぬ旅 3

怖かったことは国道一号線を走つている時だ。横一メートルのところを大型トラックが疾走していく時などは、風圧で身体が引き込まれそうになる。走行中は殆ど前方を見ずに、バックミラーに全神経を注いだ。それとトンネルも恐怖だった。今のようにトンネル内に照明など全くなかつた時代だ。いうならば日中でも漆黒の闇だ。闇の中を走行中は平衡感覚が失われ、身体がまつすぐなっているのか、傾いているのか全く分からない状態になる。倒れるのじやないかという恐怖心のとりこに憑かれたこれは経験したものじゃないと解からないと思う。トンネルの向こうにうすらぼんやりと明かりが見えたときは、ほんとに心から安堵した。

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