覚者慈音697  未知日記 第四巻  心霊雑話 魂を入れ換えると云ふ。即ち換魂、又は魂を他に送り入るる、即ち入魂の行ひ得らるるものなるかと云ふ理論なり。我は今慈音に講義をなさんと霊波を送るも入魂の一種なり。然れども是は完全なる入魂にあらずして送魂と称ふるも可ならん。又換魂と云ふは他の魂と他の魂、或は自他の魂を交換する等の類にして、此範囲も亦きはめて広し セイキョウ貴尊講義


覚者慈音697
未知日記 第四巻      
心の巻     
        換魂と入魂
           
                   ミキヨウ貴尊講述


 魂を入れ換えると云ふ。即ち換魂、又は魂を他に送り入るる、即ち入魂の行ひ得らるるものなるかと云ふ理論なり。我は今慈音に講義をなさんと霊波を送るも入魂の一種なり。然れども是は完全なる入魂にあらずして送魂と称ふるも可ならん。又換魂と云ふは他の魂と他の魂、或は自他の魂を交換する等の類にして、此範囲も亦きはめて広し。中にも悪魔は人魂と動物魂を換魂して娯しむことあり。我、斯ることを語らば汝等は我の言を信ぜざるのみか、今迄説きたる論説をも信ぜざるに至らん。然れども今暫く童子の心にて、お伽噺を聞く思ひにて耳を傾けよ。
 或処にみめ美はしき純真なる処女ありしが、一日野辺に遊び居たりしに、一人の花売り来て云へるよう、
「少女よ、汝は何と美はしきぞ。我持てる此花も汝に比しては美にあらず」と云ひつつ、彼女の鼻に香の高き花を示めし、又頭髪にもさしたるに、少女眠気を催して叢(くさむら)に俯向き眠ねたり。やがて彼女の傍らに一匹の野犬来りて是も又共に眠る。やがて夕暮に及び少女は醒めて我家に帰れり。
然るにその後少女の起居動作は一変して、今迄の柔和は粗暴となり、面影形も険悪となり行くにぞ両親の嘆き一方ならざりき。或日一人の修験者その門に来りて、少女を見て審み云ふよう。
「此少女には獣類の魂宿れり。如何せしか」と。彼女の母親涙してありし日の話をなせしに、修験者曰く、
「傍に眠ねたる犬は如何せしか」と。母答へて、
「その犬不思議にも我家を去らず」と。修験者その犬をつれ来れとて犬を縛り、娘の頭に手をおきければ娘は眠れり。やがて犬を金剛杖にて打ち殺して、娘をさめしめしに、この後少女はもとに復せりと云ふ伝説なり。汝等は是を童話なりと聞けるや。今我此事柄につきて語るべし。
 少女は純潔なるによりて感応の力強きを悪魔は知るなり。花売りとみせたるは幻影なる事は、汝等も察知したるならん。悪魔は催眠術を応用して暗示によりて、少女の魂をぬぐべく「娘よ。汝は犬になりたり」と云て彼女に犬たらしめ、
「犬よ、汝は柔和なれ」とて、催眠術感応術にて娘の柔和を犬に移し、犬の粗暴を安々と換魂を行ひたるなり。然れどももとより肉体の変化は悪魔と雖も交換することは得られざるなり。童話にて鶴に化せられしとか、獅子に化せられたりとか云へるは無根にして、獅子の心、鶴の心に化せられたりと云ふならば信をおくに足る。
 次ぎに修験者は一目見て少女の魂の変り居るを看破せるは、如何なるかと云ふに、すべて動物わけて畜生の魂は、魄よりも強く働き、魂魄の平均せざる故に直ちに看破せらるるなり。加ふるに此娘の顔を見れば、骨相学より直ちに善良なることの知らるるなり。又修験者が犬を殺したるはぬきさりし魂が、再び暗示の戻らんことあるを考慮して斯くなせしは、慈悲心より出でたる行為なることも知らるるなり。
換魂の法とは即ち暗示によりて行はるる術にして、修行せばさして難かしき業にあらねど、是は秘伝の巻に示めさるれば法は省略す。

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